[Tropico6]翻訳されたら気づかない。原文をみると面白いゲーム内テキスト表現

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英語のゲームって、とっつきにくいですよね。
細かい文字でいろいろ書いてあるけど、読んでもどうせわからないから読みたくない。理解できないからゲームもあまり面白くない…。
今回はそんな方に向けて、よく見てみると実は結構面白いトロピコ6ゲーム内のテキストをご紹介します。

ゲーム内にはテキストがたくさんあります。布告や法律、効果のワークモード変更、アップグレードの効果などなどです。その中で、ちょっとクスッとしてしまうような面白い書き方をしているものがいくつかあったのでご紹介します。

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別作品出典の有名スラング Red pill と Blue pill

元ネタ(出典)

この表現は有名なスラングです。1999年公開の大人気映画「マトリックス(The Matrix)」が出典とされています。
映画の中で主人公のネオが「赤い錠剤(Red pill)」「青い錠剤(blue pill)」どちらの錠剤を飲むか選択を迫られ、最終的に赤い錠剤を飲んで偽りの平穏な夢から覚め、現実世界にもどります。
視覚的にも比喩的にもわかりやすかったし、映画の内容も含め鮮烈に印象に残ったことからそのまま定着したんでしょうね。

トロピコとは関係なくなっちゃいますが、そもそもマトリックス自体が色々な作品から着想を得たり、哲学的要素やメタファー(隠喩・暗喩)をちりばめており、冒頭で「白いウサギを追いかけろ」と言われているので、実は「マトリックス」自体が「不思議の国」であり、青と赤の錠剤はアリスで言うところの「ポーション」であるという解釈もあるようです。

ゲーム中でのつかわれ方

冷戦時代に建築可能になるAsylum(収容所)のワークモードの選択肢として使われています。

収容所のワークモードスラング

Way of the Red Pill/Way of the Blue Pillは直訳すると「赤い錠剤の道」「青い錠剤の道」となってしまいます。しかしスラングとして使われる場合、Red Pillは「真実・自由・(残酷だけれど)直視しなければならない事実」などの意味となり、転じて「(真実に)目覚めさせる、真実を悟らせる・啓蒙する」などの意味となります。
一方、Blue Pillは「守られた幸福・都合の良い幻想・無知の幸福」などを意味し、「現実(真実)から目をそらす・幻想と知っていても都合の良いように考える」などの意味でつかわれます。

Way of the Red Pill
Inmates that did their time are true fans of El Presidente and will influence people they meet for some time.

意訳すると”収容期間を終えた収容者は、プレジデンテの真の支持者となりしばらくの間会う人々に影響を与える。”となります。「啓蒙する・(真実に)目覚めさせる」の方の意味ですね。

Way of the Blue Pill
Inmates that did their time think that they were tourists, depart from their vacation, and give a favorable rating.

一方 Blue Pillのほうは”収容期間を終えた収容者は、自分たちが楽しい観光へ出かけていたと思い込んでおり、島へ戻ると政府への支持率が上がる”となります。こちらは夢うつつと言いますか、都合の良い幻想の中にいるままです。
プレジデンテの支持者になることが「正しい真実」になるという皮肉の利いた表現であり、ゲーム内でのいろいろを考えると、どっちにしろ収容者はろくな事されていないだろうなと想像ができます(笑)。

とても有名らしいので、英語圏のかたにはおなじみなのかもしれませんが、知らなければ全く意味が通りませんしこれはホント調べるまで全くわかりませんでした。分かってしまえば、マトリックスの理不尽さ・生まれながらに管理されているイメージが重なりますし、現実に戻って未来を取り戻したネオと違い、市民はどちらを選んでも行きつくところは変わらないので、「正しい真実」でありながら「(残酷ではあるが)直視しなければならない事実」であるというダブルミーニングなところもクスッとしてしまいました。どちらかというとトロピコの民は青い錠剤を選んだ方が幸せでしょうかねえ。深い。

同音異義語の面白表現 Brain CellsとBrain Sells

世界大戦時代に建築可能になるCollege(大学)のワークモードの種類で使われており、Brain Cells(脳細胞)とBrain Sells(脳販売)という同音異義語の面白表現になります。
Brain Cellsの方を選択するとふつうに学生たちは卒業していきます。

カレッジのワークモード面白同音異義語

Brain Sells
Every time a student graduates, there is a 50% chance that he will emigrate in exchange for $300.

Brain Sellsを選んだ場合、”卒業生全員に、300ドルと引き換えに他国に移住する可能性が50%ある”ことになります。
まずお金で他国に大学教育を受けた人材を売り飛ばす送り出すって言うのもどうかと思いますし(しかも本人の意思は関係なさそう)、トロピコのシステムだと、実際はタイトルそのまま「脳(だけ)販売」されてんじゃないのかなーなんていう妄想がはかどるわけです。南の島ですからね。なんでもアリです。

翻訳されちゃうと、同音異義語であるという「何上手いこと言ってんだ」感がとても薄くなってしまうんですよね。同音異義語になっていなくとも、世界観を表すフレーバーテキストとして、選択肢、特に対になるものは全体的にうまーく作ってあると思います。全体的に毒強め、皮肉キツめ、ブラックな世界観という雰囲気を味わうのであればやっぱり英語の方がいいですね。

右か左か。完全なるフレーバーテキスト Dextrorotatory Lactic AcidとLaevorotatory Lactic Acid

全体を見たわけではないのでもっと面白いのもあるのかもしれませんが、今回ポテコが確認した中で最も馬鹿馬鹿しく、かつ大好きなのがこれ。
チーズ工場のワークモードです。

チーズ工場の面白ワークモード

The building operates on alternative basic settings and some people swear it works ybetter this way.

Dextrorotatory Lactic Acid(右旋性乳酸)は通常モードですが、Laevorotatory Lactic Acid(左旋性乳酸)のテキストがこちら。”もう一つのベーシックな設定。一部の人々はこちらの方がより良いと主張する”という文章になります。

まず、Lactic Acid(乳酸)は乳酸菌の事で、チーズや乳製品を作るために必要な菌です。違うのは「右旋性」「左旋性」の部分です。

進む光に向かって観測するとき,直線偏光の偏光面が旋光性物質(光学活性物質ともいう)を通過後に,右(時計の針の回る方向)に回る場合を右旋性dextrorotatory,左に回る場合を左旋性levorotatoryという。

引用:コトバンク 世界大百科事典内のdextrorotatoryの言及

ちょっと専門用語で難しいので引用させていただきましたが、反射した光が右に回転するか左に回転するかというハナシです。そしてワークモードの作用としてはどちらを選んでも効率は変わらない(はず)です。
なんか専門っぽい難しい言葉を使って言ってますが、”一部の人々はこちらの方がより良いと主張する”、要するに「気分の問題」の話なのです(笑)一生懸命調べて、そうとわかった時の脱力感と言ったら!ものすごい笑いました。…まあこういうところも翻訳されてたらわからないですからね。こういうテキストはゲーム内にちらほら見られます。

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まとめ:ハマるとゲームが進まなくなってしまうかもしれないけど

ハースストーンやMTG(マジックザギャザリング)のようなカードゲームではおなじみのフレーバーテキスト部分を掘り下げてみましたがいかがだったでしょうか。これを知ったからと言って、ゲームプレイにはそんなに貢献しません(笑)
攻略で重要なのは数値の増減だけですし、タスクで要求されていることだけわかればゲームは進めることができます。

じゃあなんでこんなめんどくさいところまで読むのかというと、やはり世界観を深く知りたいということにつきます。

ローカライズ版はきちんと倫理的に翻訳されたきれいな分かりやすい文章でゲームの世界を堪能できます。しかし、公式翻訳のニュアンスは、(大人の事情で)やはりどうしても変わってしまうものです。日本語に訳された状態だけを見ても、それがスラングだったり、同音異義語の「上手い事言った」文章だったかどうかは全く判別できません。
最近はカンタンにゲーム内のテキストを機械翻訳してくれる無料ツールもあり、ポテコはそれを利用しています。もし利用したことがなければおすすめです。
スラングはそう言った機械翻訳では意図をくみ取ってくれないため、翻訳としては非常にハードルの高いものとなります。でも苦労して自分で調べれば、達成感とちょっとした楽しみ(自己満足でにやりとするだけですけど)が得られます。
トロピコは政治や憲法のテキストなんかが、わざと難しい表現で書いてあったり結構手ごわいのですが、 プレジデンテになりきって島を開発・統治するためにテキスト翻訳してみると面白いと思います。ぜひチャレンジしてみてください。